平成14年度スーパーコンピュータワークショップ

2003年のスーパーコンピュータワークショップを、平成15年3月11日(火)、12日(水)に開催いたしました。

タイトル 「実験家は計算科学に何を期待するか」
日 時 平成15年3月11日(火)~3月12日(水)
場 所 計算科学研究センター2階大会議室
場所:広域地図所内地図(講演会場:④、 懇親会会場:⑫)

本年度は、実験研究の最前線で活躍されている研究者を招き、その研究紹介とともに「このような計算がやれたら自分の研究を飛躍的に発展させることができる」という期待と提案についてお話していただきました。また、本年2月より稼動している新汎用コンピュータシステム(NEC製SX-7、TX-7)についての実践的な活用方法等の講習も行いました。質問・お問い合わせは、電子メールでお問い合わせ下さい。


以下より、メーカー資料をダウンロードできます。


「実験家は計算科学に何を期待するか?」

現在、物質科学や生物科学の分野で新しいフロンテイアの開拓が始まっています。その代表的なものがポストゲノムであり、ナノサイエンスです。これらの分野では様々な新しい実験手段を駆使して生命現象の神秘にせまり、また、これまで自然に存在しなかった新しい物質を創成したり、それらの物質の機能を発見する不断の努力が続けられています。しかしながら、これらの研究の多くは分子レベルで行われており、原子や分子の個性に起因する困難はそのサイズや複雑さとともに急速に増大し、「試行錯誤」的な方法論によって問題を解明 したり、あるいは物質を設計したりすることが困難になりつつあります。最近、多くの実験家がこれまでにない大きな期待を計算科学に表明している所以です。

一方、このような生物科学、ナノ科学、あるいは溶液内化学反応の問題は計算科学にとっても極めてチャレンジングな問題です。例えば、比較的小さな分子の気相中での電子状態や構造は量子化学の方法によって、非常に良い精度で予測可能になっています。また、バルクの液体系の構造や固体の電子物性も分子シミュレーションや固体電子論の進展によてかなりのレベルで解析可能になっています。しかしながら、ナノスケールの分子や分子集合体が溶液中に存在する場合にその構造や電子物性を解明するための確立した方法論を人類はまだも っていません。したがって、このような方法論を確立することこそ、新世紀の計算科学に課せられた最も重要な課題のひとつだと考えています。それは、同時に、生命や物質の科学に強力な武器を提供することにも繋がります。

現在、計算機性能の飛躍的向上および理論分子科学・計算科学の発展によって、これまで取り扱いが不可能であった複雑系や巨大系の理論計算が現実のものになりつつあります。計算科学におけるこのような進展が物質・生命科学における展開と結びつくとき、そこに新しい科学が芽生えることは想像に難くありません。

本ワークショプではナノサイエンスやバイオサイエンスを含む様々分野の実験研究の最前線にある研究者をお招きし、その研究の紹介とともに「このような計算がやれたら自分の研究を飛躍的に発展させることができる」という期待と提案を表明していただきたいと考えています。

- 講演プログラム -

3月11日(火)
座 長 : 南部 伸考
13:00-13:10 Open Remark 平田 文男(計算科学セ)
13:10-13:40 「遷移金属および希土類を含む有機金属クラスターの電子構造」 茅 幸二(分子研)
13:40-14:20 「電子回折法による強光子場中の分子追跡」 星名 賢之助(東大院理)
14:20-15:00 「ナノ空間制約分子系に見る新展開」 金子 克美(千葉大理)
15:00-15:40 「有機単分子膜で保護されたサブナノ金属クラスターの構造と安定性」 佃 達哉(分子研)
15:40-16:00 Coffee Break  
座 長 : 佃 達哉
16:00-16:40 「固液界面に形成される吸着層の構造」 板谷 謹吾(東北大院工)
16:40-17:20 「金属錯体による水分子の活性化」 田中 晃二(分子研)
17:20-18:00 「RLi 化学種の溶液中の構造と速度論」 山高 博(阪大産研)
18:30-20:00 懇親会 (職員会館)
3月12日(水)
座 長 : 高見 利也
9:30-12:30 新汎用高速演算機システムについて
「SX-7ハードウェアの紹介」
「TX7/i9501ハードウェアの紹介」
「SX-7プログラムチューニング」
「TX7/i9501プログラムチューニング」
萩原 孝 (日本電気)
渋谷 俊輝(日本電気)
横谷 雄司(日本電気)
左近 彰一(日本電気)
12:30-13:30 昼食  
座 長 : 山高 博
13:30-14:10 「表面赤外振動分光データやナノバイオロジーの解析に必須な計算機シミュレーション」 宇理須 恒雄(分子研)
14:10-14:50 「アルケン類を活用する精密合成反応の設計と開発」 中村 正治(東大院理)
14:50-15:30 「実験と計算による時間分解蛋白質ダイナミクスの解明」 寺嶋 正秀(京大院理)
15:30-15:40 Coffee Break  
座 長 : 三浦 伸一
15:40-16:20 「副作用のないハイブリッドリポソームのがん治療」 松本 陽子(崇城大院工)
16:20-17:00 「液液界面における特異的錯形成反応」 渡會 仁(阪大院理)
17:00-17:10 End Remark 岡崎 進(計算科学セ)